Sony Network Communications Inc.

「技術のソニー」が挑むヘルスケアサービス。
肌解析や食事解析技術を生かしたBtoBビジネスで、
企業の健康プラットフォームづくりに貢献。 2019.09.04 ヘルスケア

今、働き方が見直される中で企業における心身の健康の維持が重視され始めている。社員の健康増進は、健全なオフィス環境作りにつながるだけでなく、労働生産性の向上や企業イメージの向上にも効果が期待できる。そうした社会背景がある中でソニーネットワークコミュニケーションズでは主に法人をターゲットとしたヘルスケアビジネスをIoT事業の注力領域として、ソニーのリソースを生かした健康・美容サービスを生み出している。ここでは同社のIoT事業部でヘルスケア事業に携わる木下直人氏と柚木努氏にインタビュー。ソニーグループとしてヘルスケア事業を行う意義や、これまでに打ち出してきたサービス、そして将来的にプラットフォーム化を目指すというヘルスケア事業への思いなどを聞いた。

ヘルスケアでも「技術のソニー」として世の中に貢献する

まずは現在のIoT事業部におけるヘルスケア事業の位置付けから伺えますでしょうか。 木下氏
当社のIoT事業部には、スマートホーム事業、AIソリューション事業、通信事業、そしてヘルスケア事業という4つの柱があります。そのうちヘルスケア事業は、これまでグループ内で別々に取り組んできた健康関連のリソースをひとつの組織に集約して生まれた組織です。現在は、ソニーグループが持つ画像解析の技術などの強みを生かしながら、新しいサービスの立ち上げに取り組んでいます。

具体的にはどんなサービスを打ち出しているのでしょうか。 柚木氏
画像で肌解析を行う「BeautyExplorer™(ビューティー・エクスプローラー)」や同じく画像で食事解析ができる「カロリーチェックAPI」の提供。そのほか、健康管理プログラムの「Work Performance Plus(ワーク・パフォーマンス・プラス)」やオンラインでトレーニング指導を行う「トレナト」など、これまでに7つほどのサービスを立ち上げ、主にBtoBサービスとして展開しています。また、肌解析については今年の6月からNTTドコモ様と「FACE LOG(フェイスログ)」というスマホアプリを共同開発し、一般向けにサービスをスタートしました。

お二人はソニーグループがヘルスケアのサービスを行う意義はどんなところにあるとお考えですか。 木下氏
これまでのリソースを生かし、もともとやってこなかったことにチャレンジすること自体に意義を感じています。そしてソニーが持つ技術力に機械学習などの力を加え、まだ見えていないものを可視化していく。その上で見えてきた課題を解決に導いていくことが私たちの使命だと捉えています。

柚木氏
私は今、HDP(ヘルスケア・データ・プロジェクト)というグループに在籍していますが、これからの時代、データが生む価値は飛躍的に高まると考えています。その道のりはまだ長いと思いますが、次の時代のヘルスケアでも「技術のソニー」として世の中に貢献していきたいという思いがあります。特にソニーはAV機器メーカーとして画像処理にはこだわりを持っている企業なので、それらの技術とノウハウをヘルスケアに転用しながら、今よりもっと世の中に貢献できる存在になっていきたいです。

ヘルスケア事業の中にある「ソニーらしさ」というと、どんなところでしょうか。 柚木氏
ソニーはグループ全体としては大きな組織かもしれませんが個々の社員がそれぞれ自由な発想を持っていて、スタートアップに近い気風もある。ヘルスケア事業についても果敢に新しいことにチャレンジできるのは、我々が感じるソニーらしさといえますね。

主にBtoB向けのサービス提供に注力されているということですが、企業からはどんなニーズがありますか。 柚木氏
お客様の声を拾っていくと、顧客や社員の方々にヘルスケア関連のサービスを届けたいという企業のニーズは我々の予想以上に高いということがわかってきました。しかし、実際に企業がヘルスケアサービスを立ち上げるとなると、そこにはシステムの構築を始め、いくつかの高いハードルが出てきます。特にヘルスケアの領域は情報のセキュリティレベルが高く、とりわけ大きな企業ほどセキュリティレベルの低い企業と組むのは難しい。そうしたところに応えていけるのが我々の強みです。例えば、サービスに繋がる顧客は多く抱えているけれど技術がないというような企業の方々と手を組み、一緒にシステムを作りながら課題解決のサポート役を担っていきたいです。

健康における相関性・因果関係の可視化を目指していく

ここまでのお話の中でも、ソニーグループのヘルスケア事業の優位性として画像解析の技術力が上がっています。これを応用した代表的なサービスが「ビューティー・エクスプローラー」です。これは測定機で撮影した肌情報をクラウド上で解析し、肌のキメや毛穴、シミ、色み、水分、油分などを瞬時に計測して、専用タブレットやスマホアプリで結果が見られるというサービスです。実際にどのくらいの規模で活用されているものなのでしょうか。 木下氏
主に大手化粧品メーカーや大手ドラッグストア、大手流通などの化粧品コーナーに設置され、カウンセリングのための肌チェックに活用されています。大きなところでは、今年7月よりポーラ様の全国店舗にも新APEXブランド向けに導入されました。一部の店舗では化粧品の売り上げが50%以上伸びたという統計もあり、美容のプロの技術を一段上げるツールとして高い評価をいただいています。

さらにソニーの技術力が活きている点というと主にどんなポイントが挙げられますか。 木下氏
まずは自社開発のCMOSイメージセンサーと光学モジュールを搭載した肌測定機の精度の高さです。なおかつ重さ約115gのコンパクトさとワイヤレスで使えるところも利点のひとつです。また、クラウド運用なので、複数の店舗がある場合でもデータを一ヶ所に集約でき、画像のアップから解析、結果の提供までが約3秒という、ストレスを感じさせないスピーディーさもソニーの技術力があってこその部分です。

それでは、サービスの肝となる解析アルゴリズムは、どのような仕組みで構築されているのでしょうか。 柚木氏
ベースになっているのは、ソニーが他の領域で培った技術を活かして構築した「SSKEP(Smart Skin Evaluation Program)」という肌解析技術です。スマートフォンやカメラに使われるCMOSイメージセンサーの高精度な画像をもとに、高速に解析・分析させている仕組みです。例えば、毛穴の解析についても他事業で使われているアルゴリズムを転用し、形状違いを見分けながら特徴点を抽出しています。

一方で「カロリーチェックAPI」は、外部のシステムにAPIを提供し、個々のアプリやサービスに食事解析機能を追加できるというサービス。食事画像からカロリーや栄養素を解析し、年代、性別、BMIに合わせたアドバイスが送られてくるというものです。こちらは株式会社ウィット様との共同開発で、同社が運営するダイエットアプリ「あすけん」のデータベースを活用したサービスですが、どのようなロジックで食事解析が行われているのでしょうか。 柚木氏
当初は、旧式の機械学習モデルを使って開発されました。それが2016年位にディープラーニングに移行し、精度が飛躍的に向上しています。内側では物体検出と分類問題を同時に解く手法を用いており、数万枚の食事画像を学習させたAIが食事の分類を行なっています。位置情報と分類問題が一緒に解けるので、お皿ごとに食事を分類できるのが特徴です。

活用例についても教えてください。 木下氏
自社で提供している「ワーク・パフォーマンス・プラス」に実装されているほか、他社への提供では第一生命様が提供する「健康第一」という健康増進アプリにもAPIを提供しています。また、医療や食品メーカーなどからカロリー計算以外の独自のカスタマイズを加えたいという要望も多くいただいており、現在、検討を進めているところです。

主にAIなどの先端技術を用いて、これから実現していきたいことはありますか。 木下氏
機会学習を応用して、健康における相関性や因果関係を可視化していきたいというのが根本の目的のひとつです。その人の体は健康なのか、もし不健康な状態にあるとしたら、その原因は食事なのか、睡眠なのか、それとももっと別の行動にあるのか。そういうことを可視化できるようにしていくというところにAI活用の可能性があると感じています。

今後、ソニーグループのヘルスケアサービスをどのように成長させていきたいですか。 柚木氏
当面はBtoB向けに集中していくので、クライアントになる企業の方々が今よりもっと気軽に使えるものを作っていくことが大きな目的のひとつです。「ビューティー・エクスプローラー」と「カロリーチェックAPI」のような画像解析技術については美容や食事だけに限らず、画像から何らかの情報を発見したいという方々のためにノウハウを役立てていきます。一方で、「ワーク・パフォーマンス・プラス」や「トレナト」などのオンラインサービスについては、よりサービスの利便性を高め、遠隔コミュニケーションの可能性を広げていくことを目指していきます。そして、将来的にはこれらをひとつのプラットフォームに統合し、例えば遠隔サポートや画像データの共有など、より広範なヘルスケアまでサポートできるような仕組みを構想していきたいです。

PROFILE

木下 直人Naoto Kinoshita

欧州の大手重電機器メーカー(欧州企業向けにビジネスアプリケーションサービスを提供)を経て、2003年よりソニーに勤務。ソニーでは、デバイスやテレビ・スマートフォンなどエレクトロニクス領域の事業変革に従事。現在はソニーネットワークコミュニケーションズにてIoT/AIを活用したヘルスケア事業を統括し、幾つもの新サービスの立上げ・リリースに尽力。

PROFILE

柚木 努Tsutomu Yugi

2005年ソニーに入社しテレビ事業部に所属しブラビアの設計を担当。2012年から3年間台湾への赴任を経験。現在はソニーネットワークコミュニケーションズのIoT事業部にてNTTドコモ社と協業して立ち上げた肌解析アプリ「FACE LOG」の開発に尽力。

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