ソニーグループが提供するスマートホーム。
防犯、効率化、自動化をトータルで提供し、
企業の業務効率化に貢献。
2019.08.30
スマートホーム
社会全体で働き方改革が叫ばれている今、労働生産性や業務効率の向上はどの企業にとっても避けられない課題になっている。そうした中、So-netなどの通信サービスで知られるソニーネットワークコミュニケーションズでは、自社で開発するスマートホーム技術のフォーマットをBtoBサービスに転用し、職場の効率改善や省力化につなげる事業に乗り出している。ここでは同社のIoT事業部でスマートホーム部門に携わる鈴木良平氏にインタビュー。不動産テックなる言葉も生まれ、熱を帯びるスマートホーム市場においてソニーが目指す暮らしの形。さらには、その先のBtoBサービスの提供で見据える、新たな価値の創造について話を聞いた。
IoT事業は「So-net」「NURO 光」に続く第3の柱
まず初めに、ソニーネットワークコミュニケーションズが今、スマートホーム事業に力を入れる背景から伺えますでしょうか。 ソニーグループの一員として主に通信サービスを担ってきた当社では、1995年の設立から「So-net」ブランドによるインターネットサービスプロバイダ事業や「NURO 光」ブランドでの光回線事業を展開してきました。そして、それに続く第三の柱として着目しているのがIoTビジネスで、2016年にはIoT事業部を組織化して、これまで10件以上の新規事業を立ち上げてきました。なかでもスマートホーム事業は当社が培った経験値とノウハウを注ぎ込んだ中心領域として、事業部全体の屋台骨に成長させるべく力を注いでいる事業です。
ソニーネットワークコミュニケーションズが行うスマートホーム事業のコンセプトを教えてください。 テクノロジーの活用によって家庭の中により便利で楽しい生活をもたらすことが、当社が目指すスマートホームの形です。その上で、セキュリティ、オートメーション、ニューライフスタイルという3点をコンセプトに掲げ、AIが暮らしに寄り添い、それぞれのご家庭にとって最適な提案ができるようなサービス開発を行っています。
事業部立ち上げ後、東京電力と共同で第1弾となるスマートホームサービス「おうちの安心プラン」をスタートされました。そして昨秋からは自社ブランドのBtoCサービスとして「MANOMA(マノマ)」を提供されています。MANOMAはどんな思いのもとで誕生したサービスなのでしょうか。 MANOMAという名前には、空間、人間、時間の中に流れる「間の間」を繋ぐという意味があります。そこには家族同士のコミュニケーションを繋ぐ、家と人と関わりを繋ぐ、あるいは家庭と様々な生活サービスを繋ぐといった思いが込められています。今では電話、メール、SNSと、様々な距離感を持った情報共有ツールが使われていますが、その新たなひとつとして情報共有の潤滑油になるようなサービスを育てていきたいと考えています。
MANOMAは、AIホームゲートウェイ、室内コミュニケーションカメラ、スマートロック、開閉センサーなどをひとつのパッケージとして提供し、音声による家電のコントロールや外出時の防犯、家族同士のコミュニケーションツールなど、暮らしを便利にするあれこれが詰め込まれたプラットフォームです。スマートロックやスマートスピーカーなど個々のプロダクトを提供するIoT事業者は増えてきましたが、MANOMAのようにパッケージとしてサービスを提供されるケースは珍しいですね。 確かにそれは、我々がスマートホーム市場の中でも一番に差別化をしている点です。製品やサービスを単品で提供するとなると、大抵の場合、価格を含めたスペック勝負になってしまいます。それに対して、MANOMAのようにパッケージだからこそもたらせる便利さや価値は大きいと考えています。最大7人が同じアプリケーション内でデータの共有や管理、コミュニケーションをすることができますし、警備会社の駆けつけサービス、家事代行サービスなどの暮らしサポートとも連携しています。機器ができること以外のことも統合しながらますます便利な世界へと拡張していく。MANOMAはそのベースという位置付けです。
スマートホームのプラットフォームをBtoBサービスに
こうした総合的なサービスを提供する中では、ソニーグループである恩恵を感じる点も多いのではないでしょうか。 そうですね。これだけ広範なサービスを届けるためには様々な要素が必要になりますが、それらをグループ内で揃えられることは、やはりソニーというバックグラウンドがあるからこその強みです。ハードウェアはもちろん、アプリケーションやクラウド連携。それだけではなくて、顧客管理や継続課金のシステム、カスタマーサポートなど一連の機能を自社で完結できますからね。とりわけハードウェアについては熟練のエンジニアが揃っているので、デザイン面を含めて世界基準のものを届けられるのは大きなアドバンテージです。
確かにスマートロックの「Qrio Lock(キュリオロック)」をはじめ、AIホームゲートウェイや室内コミュニケーションカメラもソニーらしい“クールさ”が光っていますね。 室内カメラというと、いかにも見られていると感じるような機器をイメージされるかもしれませんが、MANOMAのカメラは当社のスマートフォンのカメラと同等のCMOSセンサーを採用し、7cm四方、厚さ2.2cmと最小化を実現しています。デザインについてもソニーのクリエイティブセンターが手がけたもので、室内に溶け込む仕上がりです。同様にAIホームゲートウェイも室内に浸透するコンパクトさを重視し、内部にはAmazon Alexaを搭載。そのためソニー以外の家電であっても声だけで操作できるというのが大きな特徴です。また、工事不要というのも魅力のひとつで、AIホームゲートウェイはLTE SIMに対応しているので、電源を挿すだけでWi-Fi環境が構築できるというのも現代のユーザーのニーズに応えている点だと思います。
ソニーネットワークコミュニケーションズでは次の一手として、MANOMA等で培ったスマートホームサービスのフォーマットを法人向けに提供することを始められていますね。こうした技術をBtoBサービスに取り入れることで、どんな効果が生み出せると考えていますか。 BtoBサービスの展開は、当社が提供するスマートホームのプラットフォームを職場の業務改善に使えないかという構想のもとで始まりました。人口減の時代を迎え、さらには働き方改革が進む中で、業務効率化はどの業種においても重要な課題になっています。例えば、飲食店や小売店だけを取ってみても、省人化、さらには無人化が全体の大きな流れになっていますし、来店客の動線分析や商品管理など、これまでマンパワーで行われていた作業の自動化がさらに求められています。実証実験を進める中でも、商品ロスの問題や24時間店舗などの入店管理の効率化など、我々が解決に役立てそうな課題が新たに浮かび上がっています。コミュニケーションカメラの活用については既に高い効果が見えていますが、将来的には画像解析技術などを統合して、来店客の属性、店内の動線などをAI分析によってデータ化し、商品陳列や店頭プロモーションに役立つような仕組みを構想中です。
OEMによるサービス提供も
飲食店や小売店の例を挙げていただきましたが、おそらく不動産業界とも親和性が高いサービスですね。 今はレストラン、ドラッグストア、レンタルスペースなどの業態で実証実験を行っていますが、確かに不動産業も高く利用価値を感じていただける業種のひとつだと思います。実際にあるリノベーション会社の事例では、施工物件に多数の業者が出入りするため、鍵の受け渡しをスマート化し、施工中のやりとりもコミュニケーションカメラを通じて行うというケースもありました。賃貸業においても徐々に浸透しつつある入居前の無人内見に使えますし、空き家の管理、民泊などでも入室管理のほか、入って欲しくない部屋の扉に開閉センサーを付けることで無用なトラブルの防止にも役立つはずです。
BtoBサービスのブランド名は現時点で検討中とのことですが、OEMのような形でのサービス提供も行っていく予定でしょうか。また、ユーザーがサービスを体験できるような機会を用意されていく予定はありますでしょうか。 そうですね。当社でも自社ブランドの立ち上げを検討しておりますが、各事業者さんの個別ブランドでの展開も歓迎です。こうしたサービス自体が真新しいものだと思うので、いろいろな事業者の方々とともに一緒に新しい価値を創造していきたいと考えています。また、体験の機会という点については、法人を対象に1ヶ月程度のお試しプランを用意しています。まずはサービスを使っていただいて導入のメリットを感じていただければと思います。
最後にMANOMA、BtoBサービスを含めてスマートホーム事業の今後の構想を教えてください。 当面の間は周辺機器との連携、暮らしサポートを含めたサービスの拡張を積極的に進めていきます。その上で、豊富なエンタメコンテンツに裏付けされた「楽しさ」もソニーという企業が持つ一面なので、将来的にはそこに対するユーザーの期待感にも応えていきたいです。便利と安全という提供価値をベースにしながら、ユーザーから「ソニーのスマートホームって面白い」と思ってもらえるサービスを目指していきます。一方で、BtoBサービスについては他社との連携も図りながら、時代に則したスピード感を持って様々な事業者の課題解決につながるサービスを提供していきます。
PROFILE
鈴木 良平Ryohei Suzuki
1998年ソニー入社。ソニーでは法務、経営管理、事業開発、デジタルマーケティング等の経験を活かしながら複数の合弁会社設立を主導するなど数々の新規事業の立ち上げに携わる。近年は、東京電力エナジーパートナーズとの協業によるスマートホーム事業の立ち上げを牽引する等、ソニーネットワークコミュニケーションズにてIoTに関する新規事業立ち上げに注力している。