ELTRES初級編ウェブセミナーレポート 2020.09.08 通信
ここ数年、IoT関連の通信規格やサービスの提供が加速しており、時代はすでに実用フェーズへ入りつつあります。私たちソニーネットワークコミュニケーションズでも、昨年度より「ELTRES」という名の無線通信規格を用いたIoTネットワークサービスを提供しています。
本記事では、2020年8月21日 (金)にELTRESチームが主催した、ウェブセミナー「誰でも分かる!いまさらきけないIoTの活用について~ELTRES IoTネットワーク 初級編~」の様子をレポート。
「IoT」という言葉は定着してきたものの、その仕組みをきちんと説明できる人は少ないのではないでしょうか。ウェブセミナーでは、IoTの基本的な仕組みの解説はもちろん、弊社が提供する無線通信規格「ELTRES」のIoTソリューション活用事例、導入までのステップを紹介しました。
IoTとLPWAの超基本
IoTとは? どんなメリットがあるの?
IoTとは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略称です。正確な定義はありませんが、広義では「どんな物でもインターネットに接続できる」という考え方をさします。
具体的には、IoTの登場によって、人を介してしかやり取りできなかった情報(部屋の温度調整や、商品の発注など)を、直接モノからインターネットを経由してやり取りできるようになりました。
IoTによって得られる恩恵は大きく三つあります。
- モノの状態を見る
- モノを操作する
- モノどうしで対話する
IoTの導入や活用が期待される分野は、自治、医療、工場、物流、住宅、農業など多岐にわたっています。
それに伴い、近年世界のIoTデバイスは爆発的に増加しており、総務省の『情報通信白書』によると2021年には約447億台に到達すると予測されています。
IoTの基本構成
具体的にIoTについて見ていくと、基本的には次の4要素で構成されています。
- デバイス(カメラ、マイク、GPS、温度計などのセンサー)
- 通信
- サーバー(データを格納する場所)
- アプリケーション(データを閲覧するUI)
デバイスを使ってデータを収集し、それを手軽に分析・閲覧できるようになるということが、IoTの大きなメリットです。近年では、大量にデータを収集して活用する「ビッグデータ」が話題となっていますが、そのためのデータ収集手段としてIoTが着目されています。
なぜもっと早く広がらない? IoT実用化に立ちはだかる二つの壁
現在、IoT市場は「早くIoTを実用化し、集めた情報をもとにビッグデータ分析やAIによる活用を行うフェーズに進みたい」という段階に来ていると私たちは考えています。
しかし、この段階で足踏みしているケースが多く見受けられ、そこには通信に関する二つの課題があるようです。
課題1:通信コストの高さ
IoTデバイスがサーバーと通信するためには、高コストなキャリア通信かWi-Fiしか選択肢がなく、通信コストがIoT実用化の障害となっているケースが多く見受けられます。たとえば、私たちが普段スマートフォンで利用している4G通信をIoTデバイスに適用する場合、毎月4,000円の通信費が1万台のデバイスに対してかかってしまうことになります。
安価なセンサーが登場し、チップや基盤も小型化され、IoTデバイスは実用レベルとなっています。サーバーもAWSなどを活用すれば誰でもクラウドを構築できるようになりました。しかし、通信コストが足かせとなり、IoTの導入を断念するケースも少なくありません。
課題2:消費電力と通信距離の問題
IoTを広く実用化する上で期待されているのが、人があまり活動していないエリアでの活用です。これまでIoTのニーズは室内や都市部に限られていましたが、今後は郊外や山岳部に拡大することが予想されます。ですがこれは、電源が取れない環境や通信設備が整っていない環境でのニーズが増えていくことを意味し、消費電力や通信距離が障壁となっています。
IoT実用化の課題を解決する通信方式「LPWA」とは?
IoTの実用化を進めるにあたりクリアしなければいけない「低コスト」「低消費電力」「長距離通信」を可能にする通信方式として注目されているのが「LPWA」です。
LPWAとはLow Power Wide Areaの略称で、日本国内ではサブギガ帯と呼ばれる920MHz帯を使用します。空中線電力は20mWで、通常の携帯電話の基地局の32Wと比べ、1,600分の1と非常に省電力となっていることが分かります。
デメリットとしては、微弱な電波のため通信できるデータ容量は少なく、画像や動画データの扱いは難しいという点が挙げられます。
しかし、LPWAは低コスト、低消費電力、長距離通信を実現するため、多くのIoTデバイスにとって最適な通信になると言えるでしょう。
ELTRESとIoT導入の道筋
IoTに最適なLPWAの無線通信規格として、私たちが提供しているのが「ELTRES(エルトレス)」です(2019年10月からサービス提供開始)。
ELTRES、5つの特長
1.長距離伝送
見通し100km以上の伝送性能があり、他社のLPWAと比較しても長距離の通信が可能です。富士山の五合目に受信機を設置した実証実験では、和歌山県までの通信を確認できました。
2.移動性能
従来のLPWAでは時速40km以上でデータ減衰によりデータ取得に困難が発生していましたが、ELTRESは時速100km以上の移動体に対応しています。例えば、ELTRESの送信機を東海道新幹線に乗せて実証実験を行ったところ、データ取得を確認できました。
3.安定通信
誤り訂正技術や、受信機の回路技術などを組み合わせ、ノイズの多い都市部でも高感度な通信が可能です。
4.GNSS標準搭載
GPS等の衛星測位システムによる測量が可能。移動性能と組み合わせることで、高速で移動するバスやゴミ収集車の位置管理、パレットやコンテナのセンシングにも活用が期待できます。
5.低消費電力
高負荷な信号処理を受信局側で行い、ユーザー送信端末側はセンサーデータを送るだけの単純動作のみ。そのため、コイン電池1個で動作が可能です。
また、基地局の設置はソニーネットワークコミュニケーションズが行うため、お客様が受信設備の設置費用を負担する必要はなく、弊社が提供するサービスエリアでご利用いただけます。
これにより「すぐ使える(お客様による基地局設置不要)」「低コスト(月100円前後で利用可能」」「省エネ(長期間利用可能)」を実現しているのが、ELTRESです。
ELTRESのサポート体制
ELTRESは国内展開にあたり、ソニー、オリックス、NECネッツエスアイの3社により包括的なサポートを提供しています。
通信モジュールの製造・販売
ソニーセミコンダクタソリューションズ
ネットワークの構築・運用・管理、パートナープログラムの運営
ソニーネットワークコミュニケーションズ
通信サポートの販売・提供、ユーザーサポート
NECネッツエスアイ(ソリューション、アウトソーシングの支援)
オリックス(ビジネス展開時の金融・リースの支援)
ELTRESを活用したIoT導入サポート
IoTを導入するためには一般的に次の6ステップが必要となります。
- 課題整理、ゴール設定
- 要件整理、機器選定
- PoC(概念実証):Proof of Conceptの略称で、事業構想における仮説の証明やシステム実現性などの、投資判断材料を集めるための実験です。
- システム構築
- サービス実験
- 導入・サービス開始
ソニーネットワークコミュニケーションズでは、これら6つのステップすべてにおいて、ソニーグループ、そしてパートナープログラム企業様とともに、サポートを提供しております。
まとめ
これまでデジタルテクノロジーが進出してこなかった業界も含め、IoTは今後さらにその実用化が進み、変革をもたらすことが期待されています。
ソニーネットワークコミュニケーションズではLPWAの通信サービスELTRESだけでなく、IoTの導入サポートを広くご提供しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
最後に
ELTRESは安定通信・長距離伝送・低消費電力・高速移動体対応・GNSS標準搭載の特長を生かして様々な業界でご活用いただいております。
【活用例】
- 物流:移動車輛の監視
- 環境モニタリング:溜池の水位監視
- インフラ監視:街路灯の電力監視と設置位置管理
- 農業・畜産:放牧牛のトラッキング
- 人の安全みまもり:CO2センサで「3密」を検知
- スポーツトラッキング:アドベンチャーレースでのトラッキング
- IoTプラットフォーム:温湿度、不快指数、安全管理、物流管理、獣害被害対策、見守り等
「興味がある」から「実際に活用方法を検討している」までどの段階でも構いません、お客様のご希望に合わせてお話しさせていただきます。
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